top of page

【後関利明(斜視)】複視診療を切り拓く探究心と使命感。患者と日本の眼科医療への貢献が原動力

33 分前
読了時間: 9分
【後関利明(斜視)】複視診療を切り拓く探究心と使命感。患者と日本の眼科医療への貢献が原動力

<プロフィール>

2001年に北里大学医学部を卒業、2007年に同大学院を修了(医学博士)。北里大学での講師や北里大学メディカルセンター眼科部長を経て、米国UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のStein眼科研究所に2度留学し、斜視・複視診療の専門性を深める。斜視や神経眼科領域のスペシャリストとして活躍し、2020年に国際医療福祉大学熱海病院眼科部長、2024年より同大学医学部眼科学教授に就任している。


専門:斜視・複視


【経歴】祖母の言葉に導かれ、医師の道へ

【経歴】祖母の言葉に導かれ、医師の道へ

ご経歴を教えてください。


両国(東京都墨田区)の生まれです。医師家系ではなく、父は建設会社を営み、母はそこの事務職でした。弟もいて、今は一級建築士をしています。親戚では、6歳上の従兄弟が循環器内科医をしていて、彼の影響はあったかもしれません。


祖母は若くして脳梗塞を発症し、その後も後遺症が残っていました。祖母は、医者になってほしいと私たち孫によくいっていたものです。そしたら、二人が医師になりました。祖母は、強い人で、家族のボス的な存在でした。その祖母から、半ば命令のようにいわれていましたね(笑)。


小学生時代、科学者や学者になりたいと文集に書いたのを覚えています。理系の進路を自然と考えるようになり、大学受験では医学部が特に難関だと知りました。そのとき、『おばあちゃんが言っていたのはこれか!』と思いましたね。先に医師になっていた従兄弟も手本にしつつ、医師を志しました。


【専門】恩師との出会いを経て、斜視・複視診療の道へ

【専門】恩師との出会いを経て、斜視・複視診療の道へ

眼科に進まれた理由は何でしょうか。


学生時代、患者さんの生死に直面する診療は、精神的に自分には難しいと感じていました。一方で、身体の機能を回復・改善させる診療には強い関心がありました。私が医学部を卒業した当時は、現在のように複数の診療科をローテーションする初期臨床研修は必修ではなく、卒業後すぐに希望する診療科の医局に入局する時代でした。臨床実習で見た雰囲気やイメージで選ぶしかない中で、整形外科、耳鼻科、眼科で悩みました。そのとき、眼科の主任教授だった清水公也先生(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター 教授、北里大学 名誉教授)が格好よく見えたんです。手術が上手で、オーラがあって。それで眼科に進みました。


当初は、清水先生のような眼科医になりたいという憧れがありました。実際にご一緒する中で、その卓越した手術技術に大きな刺激を受けるとともに、自分ならではの専門性を築いていきたいと考えるようになりました。そんなときに出会ったのが、石川均先生(北里大学 医療衛生学部 教授)です。石川先生は日本神経眼科学会の理事長を務められた先生で、北里大学にも神経眼科の長い伝統があります。石川先生のもとで学べる恵まれた環境と、神経眼科という分野の奥深さに魅力を感じ、この道を選びました。


当時の私には、神経眼科はブルーオーシャンのように映りました。専門とする医師は多くない一方で、診療を必要とする患者さんは少なくありません。まだ解明されていない課題も多く、取り組む意義と可能性を感じたのです。何より、石川先生のそばで直接学べる環境があったことは、私にとって大変恵まれたことでした。


石川先生は瞳孔と視神経を専門とされていました。私は先生のもとで神経眼科を学びながら、あえて専門領域を重ねず、自分ならではの分野を築きたいと考えました。そこで着目したのが複視診療です。複視診療には、原因を丁寧に見極める診断の面白さに加え、必要に応じて斜視手術によって見え方の改善を目指せる魅力があります。診断から治療まで一貫して患者さんに向き合えることにもやりがいを感じ、この分野を専門に選びました。


【サギング・アイ症候群】日本でほぼ知られていなかった病気。「わからない」が悔しかったから行動できた

【サギング・アイ症候群】日本でほぼ知られていなかった病気。「わからない」が悔しかったから行動できた

神経眼科では、原因を調べるときに探偵のように調査をします。検査をし、病気が特定できたらそれを掘り下げる。このプロセスで機能障害を探るのが好きでした。


探偵のように調査をするときに「犯人」がわからないことが複視診療では多々ありました。そして、勉強していく中で、私の現在の専門である「サギング・アイ症候群」を知りました。


サギング・アイ症候群は珍しい病気なのでしょうか。


サギング・アイ症候群は、2008年にUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のJoseph Louis Demer先生たちが提唱した病気で、提唱から5年ほど経った2013年ごろでも、私の知るかぎり日本ではあまり知られていませんでした。だから、サギング・アイ症候群を掘り下げてみたいと興味を持ったのです。


そして2014年に国際斜視学会が京都府で開かれ、Demer先生のサギング・アイ症候群の講演があるとわかります。『これは行かないと!』と思い立ち、実際に足を運んで「勉強しに行きたいです」とDemer先生に片言の英語で直接伝えたんですよね。


すごい行動力ですね。


経験を積み、ある程度は斜視手術もできるようになっていました。複視についても、「北里大学で1番」ぐらいの自信を持っていましたから。なにより、どんなに勉強してもわからない・診断がつかないことがすごく悔しかったのです。だから行動できたのだと思います。


原因がわからなくても、治る人はいます。けれども、本当にこれでいいのか、再発しないのかと考えるようになっていました。『無責任なことはできない』『真面目に取り組まないと患者さんに失礼だ』と思うようになっていたのです。


【業界の課題】全人口の約4%も斜視の人はいるのに、専門医が少ない・診断がつかない

【業界の課題】全人口の約4%も斜視の人はいるのに、専門医が少ない・診断がつかない

競合が少ない点は、業界全体で見れば人材不足だとも捉えられそうですね。


そうなのです。医師は、患者さんを救って社会貢献しなければなりません。ビジネス的に一人勝ちできたとしても、それでは困ります。患者さんは増える一方ですから。


それで私は、自分の技術を積極的に教えています。国際医療福祉大学熱海病院に2020年に移動してからはフェローの受け入れを続けています。今後も若い医師の育成に力を注ぎ、斜視・複視診療を担う人材を増やしていきたいと考えています。


斜視の患者さんは、全人口の約4%います。全員が治療対象ではないものの、緑内障の患者さんが全人口の約7%だと考えると、斜視もメジャーな病気ですよね。緑内障なら、どこの眼科でも点眼薬を出してもらえますが、斜視はそうはいきません。診断をつけてもらうことも難しく、適切な治療を受けられる患者さんは他の眼科疾患に比べ少ないと思います。


【患者側の悩み】斜視には、怪我や事故のリスクだけでなく、心理社会的な問題もある

【患者側の悩み】斜視には、怪我や事故のリスクだけでなく、心理社会的な問題もある

斜視には二つの問題があります。一つは、ものが二つに見えるという機能的な問題です。遠近や段差がわからず、階段を踏み外したり、転倒したりするリスクが大きくなります。もう一つは、見た目の問題です。眼位ズレが目立ってくると、心理社会的な面でのQOL(生活の質)が落ちてきます。


「相手は自分の目をどう思っているのだろう」と、相手の目を見て話せなくなったり、うつ状態になってしまったり。お子さんであれば、学校生活がうまくいかなくなったり、いじめられたりします。つまり、精神的な問題につながります。


だから、手術して目がまっすぐになったお子さんが、自信を取り戻して学校に行けるようになったのはうれしかったですね。本人がいわなくても、「最近楽しそうに学校に行っています」と親御さんが話してくださる場合もあります。


【想い】斜視や複視の分野で、世界に誇れる水準を追求していきたい

【想い】斜視や複視の分野で、世界に誇れる水準を追求していきたい

最近、フィッシャー症候群の患者さんを診ました。フィッシャー症候群自体は治るのですが、側方視(第2眼位)の複視だけがずっと治らなかったのです。


正面(第1眼位)は一つに見えるようになったので「治りました」とほかの眼科医にいわれたそうです。ですが患者さんは、正面は一つだけど、側方が二つに見えるのが不満だと。それで、セカンドオピニオンとして私のところに来られました。


側方視の複視は、日本に限らず世界的にも、一般には手術適応とされていません。正面視(第1眼位)で一つに見えている場合、側方視(第2眼位)の複視を改善しようとすることで、かえって正面視に影響を及ぼすおそれがあるからです。一方で、側方視の複視が日常生活に大きな支障を来している患者さんもいます。私はそうした場合、正面視への影響を慎重に見極めたうえで手術を検討しています。この患者さんにも手術を行いました。正面視の眼位を保ちながら側方視の複視を改善する治療法については、私も論文で報告しており、治療の選択肢として広く知っていただきたいと考えています。


タブーに切り込んでいくモチベーションの源泉は何でしょうか。


以前は、複視という分野で自分なりの専門性を築きたいという思いが強かったと思います。ですが、診療や研究を重ねるうちに、知識や技術を患者さんの見え方や生活の改善につなげられることが、何よりの喜びになりました。斜視・複視も、硝子体や緑内障と同じように、眼科医療の大切な領域として発展させていきたい。今はその思いが大きな原動力です。


日々の診療や研究を通じて、これまで治療が難しかった患者さんにも、新たな選択肢を届けられる可能性を感じています。こうした経験を自分たちだけのものにせず、若い医師の育成や国内外との交流を通じて共有し、日本の斜視・複視診療の水準をさらに高めていきたい。そして、日本から新たな知見を発信し、アジア、さらには世界の患者さんにも貢献できればと思っています。


【所属先】国際医療福祉大学熱海病院なら、提携先ホテルで温泉も楽しめる

【所属先】国際医療福祉大学熱海病院なら、提携先ホテルで温泉も楽しめる

国際医療福祉大学熱海病院は海外患者さんも受け入れていますか。


当院も、海外からの相談を受け付けています。成田国際空港(千葉県)の近くに当大学医学部があり、そこで斜視や複視関連の相談を受けると私に連絡が来ます。


受け入れ体制も強化しているところです。隣接する「ホテルリゾーピア熱海」とツーリズムの提携もしており、月曜日に入院・火曜日に手術・水曜日には退院し、その後はホテルで3泊し、土曜に診察をして帰れる形をとっています。


斜視手術は、眼球内を触らない外眼部手術なので感染症の危険性が非常に低く、術後3日目から洗顔も可能としています。顔や目に湯船のお湯がつかなければ、温泉に入ってもかまいません。目の手術と一緒に、温泉を満喫できる病院として選んでもらえるとうれしいです。


国際医療福祉大学熱海病院


静岡県熱海市東海岸町13-1

※JR東海道新幹線/JR東海道線「熱海駅」より徒歩8分

診療時間:月〜土曜 9:00〜13:00・14:00〜17:00(休診日:日曜日・祝祭日・年末年始)

受付時間:8:30〜11:00(予約・予約変更受付時間:14:00~16:30)

 
 
bottom of page